アニメ

〈泣きたい私は猫をかぶる〉素直な気持ちを取り戻す「リアル」な人間模様

本作は、元々劇場公開予定の長編アニメだった。

しかし、社会情勢的に各地の劇場が休業するなどの措置をとったため急遽Netflix配信となった。

この流れは今後しばらくどの作品でも起きることだろう。

『ペンギン・ハイウェイ』のスタジオ・コロリド

本作の企画を担当したのは、「鋼鉄城のカバネリ」(16)や「ゴールデンカムイ」(18、20)、きみと、波にのれたら(19)などで知られるプロダクション、ツインエンジン。

制作は、第42回日本アカデミー賞優秀アニメーション作品賞を受賞した『ペンギン・ハイウェイ』で絶賛を浴びたアニメーションスタジオ「スタジオコロリド」。脚本は『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』や、『心が叫びたがってるんだ。』『空の青さを知る人よ』などの名作を生み出したことで知られる脚本家・岡田麿里。

公開前から期待が高まっていた作品だ。

 

主人公が「猫に変身」

 本作の主人公は、中学2年生の笹木美代。学校では「ムゲ(無限大謎人間)」というあだ名で呼ばれているかなりの変人だ。そんなムゲはとある日"お面屋"と名乗る人物から”猫になれるお面”を譲り受ける。その日から毎日のように「猫に変身できる」ようになり、複雑ながらも幸せな日々を送っていたはずなのだが、人間と猫との境界線が曖昧になっていく........。

 

 本作は、忘れ去られていそうな人間の優しさや脆さを十分に考えさせられる。自分だけではどうしようもないこと、気持ちを伝えられないこと、誰しもが青春時代に感じた葛藤や大人になってからの葛藤が映し出されている。ムゲは好きという気持ちを伝えられないことで”猫になること”を選ぶのだが、それは正しい選択なのだろうかと考えさせられる。

 誰もが抱えている葛藤ーー「猫をかぶる」ということーー。ムゲが恋よせる日之出は学校ではクールな印象だが、家では猫になったムゲ(太郎)にどんな悩みでも伝えてくれる。ムゲは家庭でもうまくいかず、日之出の意外な優しい一面を知り、ムゲは日之出に猫として接することをいいことだと錯覚してしまう。その結果”猫になること”を選んでしまう。

 最初は単なる恋心や青春を通した葛藤が描かれているのだが、中盤からはそれぞれの葛藤が精神幻覚のような作用を生み出している。ムゲの好きというのは、精神論からの好きに変わって行ったり、周囲との亀裂は埋められないほど大きくなって行ったりと、止められないところまで行ってしまう。猫をかぶることでしか表現できない言葉がこの作品では描かれている。

 

登場キャラクター

主人公・笹木美代(ささきみよ)

クラスでは「ムゲ(無限大謎人間)」と呼ばれる謎おおき中学2年生の少女。いつでも明るい少女だが、人には言えない葛藤がある。とある日「猫に変身できる」お面を手にしたことで人生が大きく変わることとなる。

ムゲを演じるのは、実力派女優でありながらアニメファンを公言し、声優へのリスペクトも強いことで知られ、これまで『借りぐらしのアリエッティ』『風立ちぬ』などの話題作にも出演している志田未来。

 

日之出賢人(ひのでけんと)

ムゲが恋をしている同級生。常にクールな印象を放つ男の子だが、太郎(猫の姿をしたムゲ)に対しては常に優しく接している一面がある。

本作ではムゲと日之出が2大主人公を務めている。日之出を演じる声優は「東京喰種トーキョーグール」「ダイヤのA」「鬼滅の刃」など人気アニメ作品に多数出演している、声優界で絶大な人気を誇る花江夏樹。

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